金谷さおりブログ きみのゆめ農園

Saori Kanaya Private Blog

【農×福】29年度の農福連携の方向性

5月末に職場復帰をして真っ先に行ったのは、担当地域の予算書を拝見することでした。
予想をしていた通り、数多くの自治体で農福連携が「新規事業」「重点事業」として位置づけられており、複数の公募がすでに締め切られている状況・・・。
地域のお役に立てるチャンスをみすみす逃してしまい、この時期に産休を取ってしまったことを猛烈に後悔してしまいました。

全国の状況を見てみると、この農福連携ムーブメントが起きるはるか以前から取組を進めてきた自治体と、大きな流れの中で自らもスタートしてみようとする自治体との両方が混在しています。
後者を中心にご担当者様にお話を伺ってみましたが、初めて取組を行う自治体の多くは、農林水産省あるいは厚生労働省の補助事業を活用し、農作業や6次産業化の専門家派遣、農福連携マルシェの開催に取組む予定のようでした。

農福連携の始動段階で、国の補助事業を活用するのは、効率的な方法だと思います。
(しかも、厚労省の補助率は100%です。)

そのときに大切にしなければいけないのは、農福連携を実施することの「目的」。
例えば、農福連携マルシェにおいては、どんなに「障がい者が作っている農産物」をPRしたところで、消費者の心は動かされません。
消費者が評価するのは「誰が」生産したかということではなく、「美味しさ」「安全性」「付加価値」といった品質に対する側面です。
大前提として、とびきり美味しい農産物や加工品だからこそPRする価値があるし、消費者に認めてもらえるだけの根拠が生まれるのです。

私の知っている高糖度トマトの生産者は、就労継続支援A型施設と連携して農業生産をしていますが、「農福連携」ということをPRする取組は一切行っていません。それよりも、高品質のトマトを生産することにこだわり、収益を上げ、利用者の方々に少しでも高い工賃を支払うことに力を注いでいます。

本当に大切な農福連携の「目的」とは、障がいのある人や高齢者もその特性を活かし、当たり前に農作業に従事し、美味しい野菜や果物を作り、農「業」の振興を支えるということ。
取組の事実を作ったことに終わる農福連携ではなく、多様な意味での「業」の振興につながる農福連携の在り方を追求する必要があるのです。

農福連携マルシェを啓蒙のためのイベントととらえ、イベント会社や広告会社向けの仕様書を出している自治体もありあすが、まずはこの「目的」をしっかりととらえ、多様な人材がはぐくむ素晴らしい逸品のPRの場としてマルシェが開催されなければいけません。

また、福祉施設等の利用者さんが自ら販売に立つ取組を想定される場合には、疲れたときに落ち着いて休憩できるスペース(部屋やテント等)を配置する等、福祉側の視点に立った心遣いも大切です。

マルシェの開催以外にも、調査を始める自治体、専門家派遣を始める自治体等、取組の内容は全国様々。
中でも実際に障がい者雇用や受委託を実施したことのある農業者や、福祉施設や、地域の主要農産物を生産されいる方にきちんとお話を伺うことは、スタート段階での必須プロセス。
その分析結果から、何をどう作るべきかといった生産の方向性や、専門家派遣の活用の仕方や、その地域に求められるマッチングのあり方が見えてきます。

農福連携が目的なのではなく、「業」の振興の手段として、農業側にも福祉側にもメリットのある事業が展開されるよう、私も地域のお役に立てる提案をしていきたいと思っているところです。