金谷さおりブログ きみのゆめ農園

Saori Kanaya Private Blog

【農×福】 基礎調査から得られた農福連携の可能性

昨年度より、とある市から農福連携の推進に関するご相談をいただいており、今年度はそのスタート段階における基礎調査を実施しました。

農福連携の状況は、全国に先駆けて進めている自治体もありますが、その他多くの自治体では「大事な取り組みであるのは分かるが、どのように取組んでいったらよいかが分からない」というのが実情です。

私がいつも参考にしているのは、栃木県のユニバーサル農業や、鳥取県の農福連携モデル事業です。
どちらも農業サイドと福祉サイドのマッチングをしっかりと機能させており、受委託できる農作業の掘り起こしを行いながら、実際の取組から得られる連携のポイントや作業分析を取りまとめて情報発信をしています。
地域の農業生産状況に応じて、田畑の環境や求められる農作業は異なりますが、こうした先進事例には農福連携の一つひとつの課題に対処しながら事業を継続してきた方々の知恵と経験がギュッと濃縮されており、とても参考になります。
農福連携の取組は、まずは一歩を踏み出してみなければ、課題がどこにあるのかさえ見えてこないからです。

今回、基礎調査を実施した市では、その課題と可能性を探るため、これまで個々の取組として農福連携を実践したことのある生産者と福祉施設に対してヒアリングを実施しました。

生産者から出てくる意見は、総じて前向きな意見が多く聞かれました。
「人手がいくらあっても足りない時期に、手伝いに来てくれることは非常にありがたい」
「雇用契約をすると最低賃金を支払う義務が生じるが、農作業の委託であれば畑1反当りの作業量に応じた賃金の支払いが可能となるため、経費を抑えることができる」
「福祉施設の人たちが手伝いに来てくれなければ、播種や収穫が追い付かず大変だった。これからも来てもらえるのであれば、生産面積を拡大することが可能になる」
「大勢で来てくれるので、楽しく作業ができ、お互いの理解やコミュニケーションが深まった」

一方で、福祉施設から出てくる意見からは、課題も明らかになりました。
「農作業はスポット的な作業が多い。利用者に工賃を支払うためには、通年安定して仕事を確保することが重要なため、期間限定の農作業は優先順位が低くなる」
「委託作業だとお手伝いの意識が強く、言われたことを正確に行うことが目的になりがちで、利用者の達成感が得られにくい」

農作業がスポット的であることは、おそらく農福連携の永遠の課題です。
生産者側以上に、福祉側にとっての困難を多くもたらします。
それに対して、福祉施設によってそれぞれに意向が異なる結果が得られたことは、非常に興味深いことでした。

「利用者の工賃を安定させたい」という目的は共通しているのですが、手段としてのアイディアは様々。
ある施設からは「様々な農作業を通年確保できるよう、委託農作業の年間スケジュールを作成して施設が仕事の見通しを立てられるようにしてほしい」といった要望が出る一方、「今は委託作業で農作業の経験を積むことが必要だと思うが、いずれは自分たちの畑で消費者に販売できるような良い野菜が作れるよう、専門の農家に生産技術を指導してもらえる仕組みを作ってほしい」という要望を持った福祉施設もありました。
その両方の仕組みが、この市にとって必要な農福連携の在り方なのだと思います。

全国の先進事例を参考にしながらも、その地域の一人ひとりに会って話を聞いてみなければ、地域の本当の姿は見えてきません。

貴重なご意見をたくさん聞くことができ、非常に有意義だった今回の基礎調査。
次年度は、実際のモデル事業的な取組から、より具体的な連携の在り方と必要な仕組み・機能を考察していくことが必要になります。